リック・最後の戦い(本編4)

□第五章
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軍備が配置され、ノーザンゴルドの市民が全て城に収容されてから三日後。
「帝国」の要塞が、ゆっくりと町外れのクレーター部分(帝国は最初にクレーターを作って、それ以来毎回同じ場所に着地している)に着地した。
ずずん、という振動が腹に響く。それが「帝国」の来た合図だと、それをわかっている全員が身を硬くした。
やがて、「帝国」要塞から、兵士が降り立った。
どうやら、こちらが軍備を整えているのには気付いているらしく、最初から夥しい量の兵士を送り込んできていた。
「魔法隊!煙幕用意!」
それを合図にしたフリッツ王の号令で…フリッツ王が陣頭指揮をとっていた…、魔法隊が低い声で詠唱を始める。
「張れーっ!」
その号令とともに、周囲…否、ノーザンゴルド一帯に濃霧が立ち込めた。
「魔法隊、爆炎火球用意!」
その濃霧から「帝国」兵士が垣間見えた頃に、フリッツ王は即座に命令を下す。
「放てーっ!」
炎の球が尾を引いて、真っ直ぐ飛んだ。それはまるで横に撃たれた無数の花火のように。
どがぁんっ!
どごぁっ!
遠くから、無数の爆音が響いてきた。
「第二撃!放てーっ!」
再び、爆音。数人の「帝国」兵士が空を舞ったのが見えた。
「魔法隊、下がれ!歩兵隊、前へ!槍、構えーっ!」
その号令を待っていたように、歩兵隊がパイク(5〜8mのとても長い槍)を構えた。
「進めーっ!」
ざっ、ざっ、ざっ。
規則正しい足音が辺りに響く。槍の穂先は絵に描いたように真っ直ぐだ。
やがて、「帝国」兵士が確実に視認出来る距離にまで近付いた。
無数に突き出された槍の穂先に、「帝国」兵士は前進を躊躇した。
「弩兵隊!放てーっ!」
その隙を、フリッツ王は見逃さなかった。クロスボウを装備した兵隊が、まごまごしている「帝国」兵士に容赦なく矢を放つ。「帝国」兵士は鋭い鏃をその身に受けて倒れた。
「歩兵隊、剣、構えーっ!」
敵の士気ががた落ちなのを見て取ったフリッツ王は、自らも馬から降りて剣を抜き放った。
「突撃ーっ!」
フリッツ王の号令と共に、歩兵隊は「帝国」兵士に突撃をかけた。
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