若かりし頃の話(本編2)

□初陣の夜
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初陣。リックはその言葉とその状況に頭を苛まれて眠れなかった。どんな豪傑でも初めはそうだ。初陣前夜は身体が震えてたまらないものである。そしてリックもその一人だった。
「新人」
そんなリックに、傭兵団の先輩が声をかける。
「は、はっ」
リックはしどろもどろに返事を返した。
「明日が初陣だな」
「はっ」
「ま、気楽にやれや」
無理な注文である。だが、リックには選択肢など無かった。
「はっ」
たった一つの選択肢、それは肯定の返事だった。
リックは布団に潜り、体の震えと戦い続けた。

紅い月を見ているうちに、雄鶏が鳴いた。とうとうリックは眠れなかったのだ。
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