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□微睡む現(うつつ)の泡に似て
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・微睡む現の泡に似て・
   (うつつ)

いっそ、この雪と同じように、深く、深く…。
沈んでしまえば、いい…。そうして、溶けて――消えればいい。この汚い物思いごと、消えて、なくなってしまえばいい―――

「甲太郎ぅ。」
お前がそう俺を呼ぶ心地よい声に、
「なんだ?」
「ん。呼んでみただけ。」「そうかよ。」
自然に浮かぶこの笑みを、持て余す、この感情に、
「こーたろ」
どれだけ心が揺すぶられるか、お前にはわからないだろう?
「なんだ?」
お前が俺の名を呼ぶそのたびに、。
「うん。呼んでみただけ」「――そうかよ。」
この上ないほどの幸福を感じている自分に呆れる。
「甲太郎。」
「なんだ。」
「――好き、だよ?」
「‥‥そりゃどうも。」

お前を思う気持ちに嘘はない。それでも偽りのこの関係は事実なのだから。
お前を騙し、傷つけることしかできない俺には、お前と共にいたいと願う資格はない。

でも、どうかどうかお前だけは幸せに―――。

雪が溶ければ春となる。
四季の薫る春となる。
その息吹を、
指し示す光が、
お前を、照らせば いい。
 

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