mein novel
□Queen of marriage〜女王の結婚〜
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第三章:赤銅色の髪の騎士
エーデルはアルニャから借りた白いワンピースに着替えて、はちみつ色の髪をひとくくりに結い上げる。
その様子を見にきたアルニャが鏡の前に立ったエーデルを見て驚いた。
「ああら可愛い!若いころのあたしにそっくり」
「そ、そうですか?」
「もちろんだよ。…本当によく似合う。この服も喜ぶよ。そうだ、そのワンピースに似合う化粧をしてあげるよ、おいで」
そうして化粧をしてもらった後、アルニャはエーデルの肩を抱いて、フェラン達のいる食堂へ連れて行った。
「フェラン、ユン!見てやっておくれよ」
カウンターテーブルに座って朝食を食べていたフェランは口をあんぐり空けて瞬いた。
「…エーデル?本当に、お前が?」
身綺麗に化粧を施した少女の姿を見て、少年の姿をしたフェランは腕で目をこすって何度も瞬く。
「そんなにまじまじ見ないでよ。恥ずかしい」
「あいや、悪い。…ふとお前が誰かに似てると思ったからさ」
「誰かって、誰に?」
「それが思い出せないんだよなあ」
フェランは首をひねらせた。
「変なフェラン」
気を取り直す様にアルニャがパンパンと手を叩いた。
「さあさ、エーデルも突っ立ってないでカウンターにお座りよ。今スープをよそってあげるからね」
「あの、何から何までしてもらって悪いです。昨晩だって泊まらせていただいたのに…。なにかお礼させてください」
「そうはいってもあんたを店に出すわけにはいかないしねえ…かといってリベリオンに加わせる訳にもいかないしね」
「そうじ洗濯なんでもできます。あの、お客相手じゃなくても話し相手くらいなら私得意です!」
「そうかい?じゃあ今夜ロッソ街の伯爵邸で行われる夜会に出席してくれないかい。あたしは誘われたんだけど急用が入ってしまってねえ」
「夜会に!?でも、そんなあたし…」
「気負うことはない。仮面舞踏会だ。貴族も庶民もこの場の身は身分を隠して楽しめる」
「アルニャ」
そこで話を遮ったのはフェランだった。
「彼女の身が危険だって言いたいんだろう?」
フェランは無言で頷いた。
「今夜は城のお役人サマが大勢いらっしゃる予定なんだ。いつものお役目とかでね」
「定期視察か」
「そうよ。魔術師を匿ってるのがばれたら店ごと焼かれてしまうからね。お役人が大勢来るのにエーデルがココにいたらまずいだろう?」
「確かに……」