黒絡
□お題もの
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神沖 〜蛍〜
ホタル来い
チャイナ娘から存在は聞いていた。
面と向かった時、その愉快そうに笑う青い瞳に飲み込まれそうになった。いや。飲み込まれた。
「君…強い?」
「強い?さぁ…。わかりやせんねィ」
綺麗。と口を滑らせそうになった位、白い肌のところどころに咲く返り血が似合っている。
「ん〜。やめた。君と戦いたくない。ってか…」
一瞬で背後に回られたのに対応できなかった。
「君に惚れちゃった。だから、まだ、殺したくないんだよね」
耳元で囁かれる低く愉快そうな声
俺の首にへばりついている血液をチロッと嘗めとった。
「っ……!」
回り込み俺を見る瞳は新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだった。
「まぁ、だから何って訳じゃ無いけど…まぁ、花婿候補に入れといてよ。じゃぁ」
「ま、まちなせェ!!」
「あ、俺。此処いるから。遊びおいでよ。君なら歓迎するから」
渡された一枚の紙
丁寧にも細かく書かれた地図。隠れ家だろう。
遠くから聞こえるパトカーのサイレン
ポケットに地図をねじ込んだ…
あっちの水は甘いぞ
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薄暗い路地の裏の裏。
ガラガラ
引き戸と共に鳴る場違いな風鈴の音
整理はされてるがどこか重苦しい部屋
「フフッ…やっぱりきたね?待ってたんだよ」
壁にもたれかかっている神威の青い目と赤い口が薄暗い廊下で光っている。
招かれた部屋の縁側は空け広げで小さいが路地裏とは思えない庭が見えた。
「案外遅かったじゃん。やっぱり味方裏切るのは気が引けた?」
「うるせえですぜィ。その口3針縫ってやりましょうかィ?」
「期待を裏切らない反応ありがとう、やっぱり俺の見立て、正しかったね」
糠に釘。暖簾に腕通し。豆腐に鎹。
「あんたは、俺をどうしたいんですかィ」
愚問。我ながらそう思った
「ん?一番綺麗に殺したい。とかかな?」
やっぱりな。
「そうですかィ。」
「殺らしてくれる?」
神威の顔と天井が見える。
頭を引き寄せ唇を重ねた。
今度も鉄の味がした。
あっちの水は苦いぞ
甘い水を求め、
苦い水を啜る、
ホタルが如く。
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