黒絡
□神頼み
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「珍しいなァ。てめぇから俺に会いにくるなんて…明日は雨でも降るんじゃねぇかァ?ククッ」
紫煙に包まれた広い部屋
そこに佇む一人の男。
高杉晋助。
そして、襖の柱に背もたれ死んだような目で高杉を見る銀髪の男。
坂田銀時
「あぁ?久々にてめぇのニヤケ面でも拝みに行こうか…ってな」
高杉は銀時の恋人
銀時は高杉の恋人
共に戦ってきた時代から…いやそれより昔かも知れない
二人の関係は、いつの間にか、自然に…と言って良いだろう
しかし、高杉は今や指名手配のかかっている身。
簡単に会えはしないのも事実。
「なぁ…今日、祭りやってんだからよ、久々にいかねぇか?」
「祭りっていやぁ、狗の縄張りじゃねぇか。みすみす俺に捕まれってかァ?ククッ…」
「平気だろ。今日は真選組の奴らは上様の護衛だとかなんとか……あら?これ言っちゃまずかった?ハハッ」
二人は屋敷を後にした。
「祭り、始まったみたいだぜ?」
「あぁ、花火の音がきこえらァ」
歩行天に、的屋、屋台、出店そんな大通りを横目に裏の細道を通り、人気の少ない神社へと足を進めた。
「変わってねぇなァ」
苔むした二匹の狛犬
古びた鳥居
遥か昔。いつの事か思い出せないほど昔、松陽と塾生達で来た神社
変わってない。それは嘘だ。昔は苔むしていなかったし、もう少し鮮やかな朱色だった。だが、石段に座った高杉は思い出の中に取り込まれているかのように、打ち上げられる花火を見上げて呟いた。
「何にやついてんだよ、気持ち悪ィな。」
悪態をついて見せるが、自分も高杉と同じ事を思っていた。チャリンと賽銭箱に5円を投げ入れ手をあわせる。
「神頼みかァ?ずいぶんと、マァ、信心深くなったなァ…銀時」
「困った時は神頼みだ。」
別に困った事もない。
でも、最近感じる胸騒ぎ。その胸騒ぎを沈める為の神頼み。
遠くの方で尺玉がはじけた音がした。
「ん…?どうしたよ。」
背中に温もりを感じ、瞼を開いた。
「んや…何でもねェ、何でも」
自分より華奢な腕が背中から回されている。この手を解いたら二度と温もりを感じられなさそうで、体を反転させ高杉を胸に抱きしめた。
神様でも何でもいるもんなら、こいつを殺さないでくれ。