黒絡

□睡眠
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悪夢


伊東鴨太郎。あいつを殺す瞬間の夢。
飛び散った赤く生温かい鮮血
最期にあわせた瞳


謀反者


然るべき刑、そんなことは百も承知。でも、アイツは昔は同じ志を持った友人だった。そんな奴を俺はこの手で。


以来、ほぼ毎日見るようになった悪夢




「…じかたさん…土方さん」
「え…?あ、あぁ、わりぃ、なんだっけ」
「大丈夫ですかィ?またトッシーになられたらたまりませんぜ?」





寝不足も重なって集中力なんて欠片もない。今のところ、事件から二週間たってないから、大丈夫だが、何時までもこれじゃ切腹モノだ。




「…んあぁ…そうだな」



総悟は軽い溜め息を吐いて去って行った。
俺は深く重い溜め息を吐いた。
また今夜もあの夢を見るのか。
全くもって寝るのが億劫になる



薄暗い厠の鏡に写るのは、目の下に隈を描きやつれた自分の姿。
多少痩せたか、頬骨が少し出たように見える



「ったく…なんて様だ…くそっ…くそっ…」



そんな軟弱な自分に嫌気がさしてタイルの壁を力一杯殴った。数回殴るうちに拳の皮が裂けタイルと拳を赤く染めた。


情けなくて涙が出てくる。鬼の副長がたかが一人の、それも反逆者の、死罪確定のやつのせいで


「畜生…畜生…畜生…ッ」



「ったく…お人よしですねィ」




厠の扉の向こうから声がした
木製の扉にはめごろしでつけられた曇ガラスにうっすらと茶髪が写り、扉がギィと開いた。


「茶化しに来たんなら…っ…??」



ふあっというぬくもりが胸に飛び込んできた。


「忘れろなんていわねえでさァ、あんたの大切なダチの一人だったことにに変わりねぇんですから…」
「ん…っ………」


首に回された腕が引き寄せられ唇が重なった。軽いリップ音の後、総悟はクルッと向きを変え扉をあけた。



「仕方ねぇから、俺もあんたの背負ったもん背負ってやりまさァ。」



バタンと扉が閉まった。



「ククッ……ハハハハ…」




何か可笑しく、一人笑っていた
今日は久々に眠れそうだ。


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