黒絡

□君に流れし熱き血潮を
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「遅えぜ?…銀時」
「高杉…何だ用って…次会った時は殺すって言ったよな?」
「…あぁ」



目の前にいる華奢な男の顔には、いつもの不審な笑みはなかった。

ただ、俺の目を見つめて低く返事しただけだった。それ以外、何も言わず煙管をふかした。



「煙草ってうめえもんだなァ」




真選組との激戦
春雨との内戦
その他諸々の戦いで鬼兵隊は壊滅した。とニュースでやっていた。
主犯高杉紳助を除き一人残さず戦死、自害したと。


「なぁ…銀時。お前はこの世間…どうだァ?」
「住心地はわりいが…居心地はいいぜ?」
「ククッ…やっぱりてめぇは変わってねえな。そうに生きるのが一番いい。てめぇの芯を貫いて生きろ」


高杉はそっと俺の頬に触れた。手は血液が通ってないがごとく冷たかった。


「ッ」という小さい声を漏らし、俺の手にもたれ込んだ高杉の腹部には、嘗ての昔、松陽の引き出しに入っていた小刀が刺さっていて、其処から紅黒い血液が滲み着物を染めていた。





あぁ、此奴にもしっかり血は流れていた。良かった。





崩れ落ちそうな高杉をそっと抱え膝枕に寝かせた。まだ血液が循環している。そのうちこの循環も途絶えるのか。何かを話すかのように口を力なく動かし、微笑んだ。

しばらくすると深く瞼を閉じた。二度と開かない両瞼の下の瞳は最後に俺を焼き付けたのか。


抱えた頬に水滴が一粒落ちた。
あぁ…雨か。
全てを流し去ってくれ。



まだ微かに温もりが残る唇に俺の冷え切った唇を重ねた。




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