黒絡
□蜘蛛と蝶
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「っ…ここは…どこだ」
「目覚めたでござるか?」
目の前にはサングラスの男。こっちも見ねぇで、弦の調整している。
敵か、味方か…
「心配する事ないでござる。少なくとも敵ではない」
「お見通しってやつか」
「鼓動でわかるでござる」
鼓動でわかる。高杉にはなんとなくそのニュアンスがつかめた。目の前の男は何も言わず三味線を弾き始めた。
「下手糞」
おもむろに横から聞こえた声に撥を打つ手が止まった。
「貸してみろ……っ」
上体を上げ、すわると頭がクラクラし左顔面に痛みが走る。
「座らない方がいいでござるよ」
「世話ねぇ……チィと貸せやァ」
男から三味線を借りると弦を弾いた。
脳髄から足の末端神経まで電気が走る。
一曲終える頃には奏でられる音、奏でている指、最中の表情、全てに飲み込まれていた。
「こんな鼓動聞いたことないでござる」
「だろうな」
黒いグラスの奥の光が高杉の瞳に食いついた。
「この鼓動…もう少し聞いていたいでござる」
「勝手にしろ」
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