黒絡

□俺を…。
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重なる息、湿る汗、放たれる熱を受け止め、そして眠りにつく。


俺を抱きかかえるように隣で寝ているあんたを見て、ふと思う時がある。


いつからだろう。
ムカつく野郎。と思っていた奴にに、こんな感情を感じ始めたのは-

最初は、姉貴と仲良く喋ってる姿をみて、姉貴を取られるような気がしてムカついていた。でも、月日が過ぎてゆくうちに、違う意味でムカつくようになっていた。なんで、あんたの視線の対象が俺じゃないんだ。と

別に、笑顔を見せてくれなくてもいい。俺が少しでもあんたの視線に入ればいい。だから、俺は少しでもあんたに近づけるように、厳しい鍛錬を重ねた。


「近藤さん。上京する件だが、総悟も連れて行っちゃくれないか?」

その一言を聞いたとき俺は凄く嬉しかった。あんたは知らないだろうが、俺は、局長との会話を襖越しに聞いていたんだ。

俺はまだ、小さいからと少し渋る局長を前に、俺の刀術は凄いからと、きっと優秀なやつになるからと、頭を下げてくれた時は、本当に涙が出るかと思った。


やっとあんたの目には俺の姿が、
やっとあんたの耳には俺の声が、
届いたのだ。と

姉貴を田舎に置いていくのは、つらかったが、それより、あんたと一緒に上京出きることが嬉しかった。


そして、上京して数年してから、気持ちを伝えたとき、あんたは何の躊躇いもなく俺を抱きしめてくれた。


その時、嬉しいはずなのに、素直に喜べなかったのは、あんたが俺に姉貴の面影を重ねたんじゃないかと、姉貴に似てる俺だからなんじゃないかと思ったから。

でも、あんたの胸に抱かれていると、そんなことどうでもよくなった。どんな理由であれ、あんたは、俺を抱いてくれた。それだけでいい。


「十四郎…」
「………んァ?」


そんなこと考えてたら、気付かないうちにあんたを呼んでた。

寝ぼけ眼で、少し高めの体温を感じる。そして、あんたは俺の髪に顔を埋めるんだ。


「総悟…もう少し寝よう」
「へぃ…」


今宵もあんたの温かくしなやかな胸に抱かれて寝る。

あんたの温かさを感じながら


end
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