戴き物

□「ミーティア」ユン様より
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雪の残り香

ふわり、ふんわり落ちてくる。

空からの贈り物。









「うわぁ…」


『謎』を、解いた後は、けして軽い気持ちではいられない。『謎』があるという事はイコールで人が死ぬ事に繋がっているから。

だけど、空から降り出した白い欠片に、心を奪われずにはいられない。



「雪、か。見るのは初めてやもしれんな」


「ネウロ。ほら、」


後ろから、柔らかく抱き締めてくれる腕に安心する。ふんわりと香るネウロの匂いにうっとりしながら、冷たさを乗せた指をネウロに見えるように掲げる。私の体温ですぐに溶けてしまうけれど、それを見たネウロの瞳がキュゥッと細まって、私はなんだかうれしくなった。
溶けて、水滴だけが残った指をこすって、再び雪に、空に手を伸ばす。


「前に見た雪は、ネウロが降らせた硫酸だったもんね」

クリスマスの楽しいイベントを、つぶされてしまった思い出。何だかんだで、闇鍋は楽しかったしおいしかったけど。
ネウロもそれを思い出したのか喉を鳴らして小さく笑った。


「ああ、貴様が貧相な体をサンタクロースなどという衣装に身を包んで、な」

抱き締める腕に力が込められて、私は雪に伸ばした手ごと、スッポリとネウロの腕の中に収まってしまう。背中に感じる厚い胸板が、あたたかい。
そのぬくもりにボゥッとしながら、ネウロの腕に指を引っ掛ける。かじかんだ指はうまく動かないけど、上からネウロの手が押さえてくれて、私はネウロの腕にもたれかかった。


「貧相って…失礼だよ…」


「何を言うか。こんなにも貧相ではないか」


こんなにも。
そう呟いたネウロの手が、キュッと私の手を握る。覆い被さるネウロの重みが、増して、潰されてしまいそう。
耳に感じる吐息が、熱く体を燃やす。冷たいネウロの唇が、火傷しそうなくらい、熱くて、

火照った頬を、チラチラと降り注ぐ雪が冷ましていく。だけど、冷めても冷めても、より一層、体は火照るだけ。

熱い。雪が、ネウロが




「熱い、よ…ネウロ」


「奇遇だな。我が輩もだ」


そう、唇を目一杯つり上げたネウロが、囁いた。
抱き直されて、ネウロと向かい合うと、ネウロの息が白い霧になって私に降りかかる。覗く牙は、動物みたい。食べられちゃうかな、なんて思ってしまう。


「ならば……冷ますしかあるまい?」


私の返事も聞かないで、重ねられた唇は凍てつくように冷たかった。
なのになんでだろう。それをまた、


熱い、なんて思うなんて。

名残惜しむように離れていく、到底冷ます事なんて望めない唇は、微かに雪の香りがした。


「ネ、ウロ…」


見つめた瞳は、熱く燃え上がっていて、その熱情に促されるまま私はネウロに口づけた。

触れた肌から、唇から、熱は移る。私になのか、ネウロになのか、わからない。


ただ、まだ雪は止みそうになくて。

だから、冷やさないと…いけない……



口の中で、雪の味が弾けた。




終わり
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