捧げ物

□夜明けの詩
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Thine are these orbs of light and shade;
Thou madest Life in man and brute;
Thou madest Death; and lo, thy foot
Is on the skull which thou hast made.
By Alfred Tennyson

主よ、この太陽も、そしてこの月も、貴方のものです。
貴方は人間の生命を、そして獣の生命を造られました。
いや、実に死をも造られました。ですから、主よ、
御自分が作られた髑髏を踏み躙っておられるのです。
アルフレッド・テニソン



リネンの肌触りに埋もれながら、それよりも尚滑らかな男の肌に指を滑らせる。整った眦がすうっと上がり、美しい碧玉の渦が見えた。
影を讃えた深い瞳に魅了されるのを感じ、促されるままに男の裸の胸に顔を埋める。
造りもののように白い肌を愛で、自分のそれよりも若干緩やかな鼓動を愛でた。

この男の感触とともに目覚めるようになってからずっと、望みえないほどに幸福だった。
世の恋人たちのように愛を語るでも、誓いを交わすでもない。
出会うはずのない存在であり、届くはずのない愛だったのに、こうして互いを見つけた。
共に眠り、共に目覚める幸せを繰り返し噛みしめるだけで十分だった。

けれど―時々、わけもなく怖くなる。
あまりに幸せすぎるから、だろうか。
この出会いは幸福は、本来異常なものであると知っているからか。

落ち着いた部屋の調度と、かすかに香る甘い匂い。窓辺に飾られたレモンの鮮やかな金色を見つめ、少女は哀しく微笑んだ。

「ねえ、ネウロ」

男の頬に白い指を這わせ、確かめるように輪郭をなぞりながら、そっと名前を呼ぶ。

「…何だ」

男はけだるげに答えた。

「ねえ。少し、くだらない話をしても…いいかな」

愛しげに男の腕や髪に触れながら囁いて、男が億劫そうながらも小さく首を縦に振るのを確認する。
聞いてくれるらしい。優しく男の頬に両手を添え、男の手が髪を撫でるのを感じながら、少女は目を閉じた。


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