Short

□Who is The King of Underworld?
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ハロウィン…欧米諸国では今やクリスマスと並ぶ大きなイベントとして人々の間に根付いている祭日。
日本ではあまり一般的ではないとは言え、10月31日に子供たちがさまざまな格好をして「Trick or treat!」と叫ぶ姿はもはや馴染みのものだろう。
しかし、その名前の由来―すなわち、ハロウィンはあらゆる聖人たちを記念するキリスト教の祝日、『万聖節』の前夜祭であるということを知っている日本人はほとんどいないのではないだろうか。

「Hallowmas」の「eve」―すなわち、Halloweenだ。

そう、まして、それが本来古代ケルトの風習であること―
つまり、当時新年そして冬の始まりであった11月1日の前日は、この世と魔界との間に目に見えない「門」が開くと考えられていたということを知っているものはいないだろう。


トロイに腰掛けて大きく長い腕を足を組み、この事務所の真の主―脳噛ネウロはつらつらと取り留めもない思考を巡らせていた。

彼にとって「思考を巡らせる」ことはすなわちカロリーを消費することに等しい。
それは飢えに直結する。彼が最も忌み嫌うものだ。

それでも彼がこのように無駄なエネルギーを費やしているのは、そうせざるを得ない理由があるからに他ならない。

10/31。サウィン―世界の扉が開かれる夜。

奴隷はもう既に家に帰している。
ここからは、我が輩の世界。暗く冥い、我が輩の生きる世界だ。
しばし瞳を閉じ、いつもと変わらぬ無表情で、冷然とした声で、誰もいない空間に話しかけた。

「いつまで隠れているつもりだ―Lilis」
「あら、気づいていたのね、Neuro。流石だわ」

甘く深みのあるなめらかなアルトが、人ではありえない不思議な発音で呼びかけに答えた。
背筋がぞくりとするほど艶めかしい声。
そして、同時に、暗闇の中からほの白く光る女性の肢体が浮かび上がり、現実にはありえないほどの肉感的な女の姿がそこに現れた。

リリス、と呼ばれた女は、ほっそりとした肢体に布を一枚、巻きつけるようにして纏っていた。
流れ落ちるゆるくウェーブのかかった髪と同じ夜色の布である。
それは病的なまでに白い面差しを縁取って、美しいながらもどこか歪な―おぞましさにさえ似た気配を醸し出していた。
布越しでも解るたっぷりとした乳房と下腹部、見事な曲線を描く白い太腿が煽情的だった。
きっと指を這わせたなら、絹のように滑らかなのだろう。
そして、そのなかにべっとりと粘つくような退廃的な色気を潜ませて、あらゆるものを虜にするのだ。

血のように赤い唇に隠微な笑みを滲ませて、女はネウロの元に歩み寄った。
ネウロはあからさまに嫌悪感を表情に上らせて、冷たく言った。

「何の用だ、貴様が自ら地上に来るとは」

「わかっているはずよ、ネウロ。―魔界王が死んだの」


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