おお振り

□桃太郎
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――桃から生まれたのは、榛名元希という男の子でした。


桃太郎
 〜榛名と下僕のはっぴーらいふ〜


お偉いお役人の下に拾われた榛名は、何不自由なく毎日を過ごしていました。

しかし、なんだか退屈です。使用人を困らせたり、散々いたずらをしてまわる日々を送っていました。

そんな榛名を見て義親は「そんなに元気があり余っているのなら、
西浦島に行って鬼退治にいってきなさい」と言われました。

しかし、面倒くさがり屋の榛名です。即効で断るに決まっています。

それなのに、彼がそれを承諾したのは義父の発言が原因でした。

「なんでも若いぼいんぼいんねーちゃんが、大勢捕まっているらしくてな。鬼を退治したあかつきには
その娘を嫁にくれるというのだが。…それでも行かんというのか?」

「んだよー、そんな特典あんならさっさと言えよなー」

あははと笑いあう息子と義父。

はたから見ればほほえましい限りだが、話の内容は下品極まりない。

まぁ、そういった経緯で榛名はぼいんぼいんねーちゃん、
もとい人質となっている女性を助けに、黍団子を持って西浦島へと向かったのであった。



榛名が始めに向かったのは親友の秋丸の家だった。

別にチャイムにも秋丸にも恨みはないがピンポンを乱暴に何度も押しまくってやった。

流石の騒音にすぐさまはーい、と秋丸が出てくる。榛名の顔を見るなりドアを閉めた。

その間ほんの数秒しかない。反射反応というものだろうか。あー、慣れって恐ろしい☆

「……あーきーまーるーく〜んー?」

榛名が今どういう表情をしているか、ドア越しの秋丸には手に取るように分かった。

幼いころから半強制的に一緒に行動させさせられたのだ、それぐらいお安い御用というものである。

そして自分がこの後、抵抗も虚しく面倒事に巻き込まれてしまうことも。

しかし、やはり少しでも抵抗しておかないと後から自分を呪うことになる。
自分は抵抗したぞ!ということにしておきたかった。

そのあと数分もたたないうちに、榛名に身柄を拘束される秋丸であった。



「―で、榛名は女の子を助けに西浦島へ行くと。」

「うん、うん。名誉あるお供だぜ?」

何が名誉あるお供だろう、と秋丸は内心呆れていたが言葉には出さないでおいた。

話がややっこしくなるのを避けたかったのだ。

「(下心見え見えだって…。)まぁ、嫌がったって連れて行くんだろうし、別にいいよ。」

こうして第一の家来が出来た、榛名でした。

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