頂きもの

□その命は儚い
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それは一瞬のことだった。

いつものようにデートをしている途中。

突然倒れた銀時

溢れ出す血

嘲笑う銀時を刺した男




いっぺんに俺の瞳に入ってきた信じがたい状況に目を瞑りたくなるのを必死に我慢した。

銀時をっ…銀時を助けなければっ。



「おい銀っ、しっかりしろ、」

「……じ…かた…ぁ」


よかった。
まだ息はある。


「今病院に連れてってやるから、ちょっと頑張れな」

「…ん、」



傷口に着ていた上着を巻きつけ、銀時をおぶさる。
荒い呼吸をしている銀時にあまり負担にならないよう、速く、でも最小限の揺れに抑えて病院まで走った。

突然とはいえ守れなかった自分に酷く嫌気がさす。

噛み締めた唇から血が滲んだ。




幸い怪我は思ったより軽く、一週間も入院すればある程度回復するぐらいにおさまった。

しかしそれはあくまで怪我の話で、突然襲われた銀時の心はどうだろうか。多分少なからず傷付いているはず。それでも、きっとこいつは笑うんだ。「俺斬られちゃったよ」なんていいながら、傷付いてないふりして、守れなかった俺にさえ気づかって、笑うんだ。


そう思えば胸が押しつぶされてしまいそうになる。



「…んぅ……」

「銀時?目が覚めたか?」

まるで寝起きのように目をこすり、ゆっくりと俺の方を見る銀時。

そして…

「あ‥ひじかた…はは、俺…斬られちゃったよ」

ほら、やっぱり。

銀時は笑った。


「土方、俺のこと刺した奴は?」

「総悟達が捕まえたよ」

「殺したの?」

「…あぁ。昔の攘夷戦争で親を亡くしたらしくてな。恨みで前戦争に参加していた奴を次々に殺してたらしい」

だからお前も狙われたんだ。前科もあったし、殺すしかなかった。


「そう……」


告げれば、銀時は俺に背を向けて肩を震わした。

なんで



「…‥銀、泣いてんのか」

「泣いてねぇよ」


なんで


「銀、」

「泣いてねぇって」



なんで、

あんな奴の為に泣いてんだよ。

自分の為には意地でも泣かないくせに…。


後ろから銀時を抱きしめる。
頬に触れれば、生暖かい水が指を濡らした。



「馬鹿だよお前は」

「……」

「あいつはお前を殺そうとしたんだぜ?」

「…‥でも、それでもあいつは1人の人間だよ。あいつが死んで悲しむ人がきっといる。あいつ自身がこの先守りたい奴だっていたかもしれない」


あぁ、確かにそうかもしれない。

だけど、それだったらお前は?

お前が死んで悲しむ奴もいるんだ。
お前が死んだら俺は…きっと生きてはいけない。


気づきたくなかったけれど、考えてみれば腕は俺より強い銀時。
あんな素人の攻撃なんて避けられた筈なんだ。

気づきたくなかった。
でも気づいてしまった。




「銀時…お前……死のうとしただろ…………」














その命は儚い



ただ黙って俯く銀時に、死のうとしていたことが本当なんだとわかった。
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