BLEACH

慰め役
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「冬獅郎!」
「あ?」

振り返ると同時に冬獅郎の眼前に黒い球体。

「っと」

慌てて受け止めたそれは所謂、というかただの黒いヘルメット。冬獅郎はそれを投げた人物を睨み付ける。

「危ねーだろ!」
「悪りい悪りぃ、まぁキャッチしたからいいじゃねえか」
「ったく」

悪態を吐きながら投げ返すとあっさりとキャッチされた。
少し悔しい冬獅郎。
バイクに跨がる相手に近づくともう一度、今度は手渡しでヘルメットを渡された。

「修兵どっか行くのか?」
「いんや、デートの帰り」

にかっと笑う修兵に冬獅郎はまたかと息を吐く。
従兄弟の修兵が大学に入って約九ヶ月。付き合った女は冬獅郎が知るだけでも片手以上。

「お前なんかいつか女に刺されてしまえ」
「ひっでー。そういう冬獅郎も中学でモテてるらしいじゃん?同級生から高校生、果ては実習生のお姉様迄」

何処からの情報かわかるだけに聞く必要がない。大方冬獅郎の幼馴染みの少女か何故か気に入られている隣人の水商売風美女だろう。

「興味ねー」
「もったいねえなー、若いうちは遊んどけ」

何処の親父だ、と冬獅郎が言えば「ひでー」と泣き真似までする始末。
ヘルメットを手元で弄びながら修兵のバイクに寄りかかる。時刻は八時。この時間にデートの帰り、ということは冬獅郎の今までの経験からして。

「……しゅ」
「っし!海行くぞ」
「はぁ?」
「冬獅郎今日誕生日だろ?祝いだ祝い」

殊更明るい態度の修兵。見え見えの意地っ張りに付き合うのも年下の運命なのだろう。

「仕方ねぇから行ってやるよ」
「さっすが冬獅郎クン♪」

バイクの後ろに跨がる。

「…女運悪いんだから俺にしとけっての」

小さな呟きは、エンジン音に掻き消された。



end.

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