BLEACH
□待つ役
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白い雪が落ちていく空を見上げる。
ぼたん雪は一護の顔に落ち、溶けて水滴となる。頬から流れるそれはまるで涙のように。
「冬獅郎」
雪の化身と見紛う色彩と能力を持った死神を想い描く。一時も忘れることの無いあの姿。
『日番谷隊長だ』
言い直す声は聞こえない。
名を呼ぶ度に虚しさを感じるが、呼ばずにはいれないこの葛藤。
「…っ、冬獅郎」
『あたし、信じてるわ。隊長はきっとどこかで生きてる』
いつも陽気な女性が、自分に言い聞かせるように語ったのは二年前。
『あんたが信じなくてどーすんのよ』
背中を思いきり叩かれた痛みを、一護はまだ忘れてない。
「何処ほっつき歩いてんだよ、冬獅郎」
「『日番谷隊長だ』って言ってんだろ」
「…え」
待ちわびた、聞きたかった声が聞こえた。一護が耳を疑ったのと同時に、それまで感じていなかった懐かしい霊圧。
振り返った先、ボロボロの死覇装を纏った姿があった。
「冬獅、郎?」
呆然と名を呼ぶ一護。
少し背が伸びたのか、成長した一護との目線の差が昔と変わらないままだ。
「だから…ひつ」
訂正しようとした冬獅郎は、あることに気付いて眉を寄せた。
「黒崎…あれから何年経った?」
「七年、だよ」
「っ!!」
そう。冬獅郎がいなくなって七年の月日が過ぎた。
「待ちくたびれたぜ」
「すまん」
「お帰り」
「……ただいま」
二人初めて交わすその言葉に、くすぐったさを感じながら微笑んだ。
「行こうぜ、尸魂界」
「あぁ」
腕を掴んで走り出す。
きっと尸魂界では乱菊が宴の準備をして待っている。七年間開いてきた宴。
主役がやっと帰ってきた。
「冬獅郎!誕生日おめでとう」
「……日番谷隊長だ」
end.