BLEACH

霜焼
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天才児がいると聞いた。

類稀なる才能を持つその少年の名は堂々と主席の位置にあり、努力を重ねた俺の名は二番手に着いた。



『日番谷冬獅郎』



天才児の名の読み方は、わからなかった。





真央霊術院一学年。
入学式典が終了した生徒達はそれぞれの教室に入り、担任の話を聞き流しつつ視線をさ迷わせていた。

その中でも際立つ、一人の小柄な少年。

光に透ける銀の髪。冷たさを秘めた翡翠の瞳。小柄な体は細く、しなやか。視線は教師を無視して空に向けられていた。

名を、日番谷冬獅郎。

興味があれども不機嫌そうな眉間の皺を目にしては、話しかけるのを躊躇してしまう。主席への嫉妬と躊躇いから、冬獅郎に近寄ろうとする者は多くはなかった。





「また日番谷が一番か」
「すごーい」
「どういう勉強してるのかな」
「才能の差だろ」
「天才っているもんだな」
「なんかズルしてんじゃねえの?」
「檜佐木先輩より凄かったり」
「まさか」

入学して三度目の試験結果発表後。結果を一瞥した冬獅郎は大した興味も無く空を眺めていた。
羨望、嫉妬、特に嫉妬の声がよく耳に入る。ただのざわめきのそれらは冬獅郎の頭にとどまることはなくそのまますり抜けて行く。
ふと、その顔に影がかかった。

「一位おめでとう」
「………なんか用か?草冠宗次郎」

半眼を向けられた相手は動じもせず、にこりと笑った。

「名前知っててくれたんだな。日番谷冬獅郎」

邪気のない嬉しそうな笑顔に日番谷は虚を突かれた。

「級友の名前くらい知ってる」
「ありがとう」

にこにこと愛想の良い宗次郎。毒気を抜かれた冬獅郎の無愛想が崩れた。

「……変な奴だな」


言葉を交したのはこれが最初。



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