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□私と貴男ふたりきり
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太陽が真上に昇る頃、李黄は手作りの菓子を持って、幼馴染みである曹丕の屋敷を訪れていた。


「仲達はどうしている」

「相変わらず、一心不乱に仕事をなさってますよ。戦も近いので、以前より根を詰めて……。身体を壊さねばよいのですが」


二人は向かい合って座り、茶を啜る。李黄の淹れた茶は味と香りに深みがあり、曹丕はこれが特にお気に入りだった。


「ふっ、そう言いながら昨日は熱かったのであろう?」


曹丕の意味深長な言葉に昨晩の事を思い出し、李黄はくすくすと笑う。


「それが寝てしまわれたのですよ、仲達様。あまり睡眠をとられていないようでしたし、私としては構わないのですが」

「ふっ、拗ねたのか」

「ええ。何故起こさなかったのかと怒られてしまいました。謝っても弁明しても、全然許して下さらないのですよ」


限界だったのだろう。あの口付けの後、司馬懿は倒れるように李黄に覆い被さって眠ってしまった。

司馬懿が目を覚ました時には既に夜が明けていて、李黄は出来上がったばかりの朝食を台に並べていた。

仕事が忙しく、全く行為が出来なかったここ三ヶ月。

司馬懿は耐えに耐えてようやくと思った矢先、あろう事か眠ってしまったのだ。その時の司馬懿は諸葛亮の策に嵌った時よりも、更に酷く悔しがったという。

曹丕はその話を聞いて声をあげて笑った。そして一しきり笑った後、悪戯を思い付いたのかにやりと口角を上げる。


「つくづく面白い男よ。後でからかってやらねばなるまい」

「くす、ほどほどにお願いしますね。では、子桓様。私はこれで」

「また散歩か?」


李黄は微笑みながら頷き、静かに立ち上がった。

彼は散歩を日課としており、よく一人で出掛ける。


「久々に、ゆっくり語り合おうかと思いまして」

「ほう……。随分と楽しそうな散歩だな、李黄。私も行こう」

「それは心強い」


曹丕は軽く笑って立ち上がり、歩き出す。李黄も曹丕の少し後ろに立ち、同じ目的地へと歩いて行った。




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