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□死に逝く諸人
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死に逝く諸人


あぁ、そうなんですか。


興味が無いと言わんばかりに吐かれた少年の言葉に、陸遜は眉をしかめた。

少年は手首を後ろ手に縄で括られ、他の敗将のように陸遜の前に膝を着いている。

陸遜率いる孫呉の軍に完敗した小國の家臣達は、今、次々に処刑されていた。断末魔の悲鳴や命乞いの声が飛び交う。少年はそれが五月蠅くて仕方無いといった様子で、とても不機嫌な顔をしていた。


少年の名は燈という。
陰間を生業としている者で、先程陸遜自ら処刑したとある有力武将の男寵だった。

それはもう大変可愛がられていたらしく、男は常に燈を隣りに置いていたらしい。

そんなに寵愛されていたのならきちんと教えてやらなければ可哀相だと、陸遜はその男を処刑した事を伝えた。

するとどうだろう。

燈はさもどうでも良いという顔をして、あの台詞を吐いたのだった。


「貴方は、悲しくはないのですか……?」


てっきり燈も男に情があると思っていた陸遜は、珍しく面食らった。


「悲しい?」


今度は燈が驚いた顔をした。そして陸遜を嘲笑するように、鼻でふっと笑う。


「私は身体を売りにしているんですよ? いくら寵愛を受けていたからって、いちいち心を売るような馬鹿な真似はしません」


確かに、そういう商売をしていれば燈の言い分は一理ある。が、彼は男からかなりの寵愛を受けていたのだ。ならば少しくらいは情が移るものだろうに、何故こんなにも平気なのか。陸遜は不思議な思いだった。



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