蝶の舌
ちろちろと、珠伊の舌先が私の指を舐める。
嫌らしい水音を立たせ、指の腹を味わうように舌が這い、熱くざらざらとした感触にじわりじわりと雄根が疼く。
それは珠伊も同じな様で、当初より若干呼吸を乱し、私の人差し指を愛撫し続けていた。
「っ……」
不意にきゅっと強く吸われ、不覚にも肩が揺れる。
そんな私に珠伊は嬉しそうに微笑み、再び舌を動かして巧みな愛撫を再開した。
男娼であったこやつを身請けしたのは、今から丁度四年前か。
当時の珠伊は、水下げされてから引退する迄の十年間、首位の座を勝ち取り続けていた異例の存在であり、常人はおろか一端の貴族でさえ手の届かぬ程の男だった。
美麗な容姿は勿論の事、客への丁寧な対応と、誰であろうとも誠意を持って接し、尽くす姿勢が人気を呼ぶ事に繋がったのだろう。
そんな珠伊を努力の甲斐あってどうにか身請けする迄に至り、私の資産の半分は投げ出さなければならないくらいの大枚を店に支払った。
私のものだとこの身に引き寄せた時の珠伊の顔を、私は今でも鮮明に覚えている。