ぴたりと、珠伊の愛撫が止まった。
急な事に不思議に思った私は、どうしたのかと僅かに眉をひそめる。
「如何なさいました……?」
「何がだ?」
それはこちらの台詞だと思いながらも、静かに問い返す。
「少し、不安気な顔をされていました」
心の底から心配しているのだろう。そう言って私を見詰める珠伊の瞳が、ゆらゆらと揺らいでいた。
私は珠伊の頭に手を置き、火照った頬にそのまま指を滑らせ、包み込むようにそっと触れた。
「お前は、後悔していないか?」
私の言葉に珠伊は驚きもせず、穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと左右に首を振った。
疑うつもりは無い。
が、心は釈然としない。
「お前は優しい。過去に春を売っていたとはいえ、私の兄のように人格者だと思っておる。それ故に、店に幼子や少年達を残し俗世へと出て来た事、少なからず悔やんでおるのではないか?」
無理矢理連れ出した様なものだった。珠伊は店の者達を気に掛け、最後迄出て行く事を躊躇していたのだから。