携帯獣夢

□落ち着く場所は君のとなり
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柔らかい春の風に誘われて、小さな花弁が空で舞い踊る。
それに合わせて草ポケモン達が嬉しそうに辺りを跳ね回り、心地好いメロディーを紡ぎ出す。


春は本当に素敵だ。

普段と同じ道を歩いていても、いつもと全く違う雰囲気を醸し出している。

春の香り・・・って言うのかな?
優しい香りが鼻を擽って、とても気分がいい。
鼻歌なんて唄いながら町からちょっと離れた小高い丘へと歩を進めた。


町とその周辺を見渡すには申し分ない程の高さで、私はよくここに来て辺りを眺めている。
ちっぽけな世界だと思っていても、視界が開け大自然を目の前にすると、計り知れない程広大な世界があるんだと思わされる。
世界はやっぱり矛盾だらけだ。
でもその矛盾は真実のようで虚偽、身近なようで遠い。
そんな取り留めのない事を考えさせられる。

考えれば考える程自分が分からなくなり、孤独感が全身を支配する。


「・・・レッド、まだ帰ってこないのかなぁ・・・」

ストンとその場に座り込み顔を埋め、数週間前にふらりと出て行った幼なじみを想う。
付き合っている訳ではないが、私は彼に好意を抱いている。彼は私の事をどう思っているかは知らないけど、多分友達感覚なんだと思う。
鈍いのかな?私の気持ちも知らないでいっつもふらふらヘラヘラしちゃって。
・・・あ、なんか今すっごく腹が立った。

「レッドのばーか。レッドなんてシロガネ山で遭難しちゃえ」
「・・・それはちょっと酷くないか?」

聞こえる筈のない声が突然後ろから聞こえた。私は驚いて目を見開きバッと後ろに振り返る。
そこには、先ほど言った悪口の相手、レッドが苦笑いしながら立っていた。


「なっ・・・!なんで此処にいるの!?」
「なんでって言われてもなぁ・・・。自分の故郷なんだから普通だろ?」

全く持って正論だ。私はぐっと言葉に詰まると、レッドはにこりと笑って(苦笑いなんかじゃなくて、無邪気な笑顔で)私の頭をぽんぽんと叩いた。


「それにさ、俺だっていろいろ実感したいんだよ」
「・・・実感?」
「そ、だから此処に来たんだ」


レッドの言っている意味が分からずただ首を傾げてきょとんとしていると、レッドは私の隣にドサッと腰を下ろして今日一番の笑顔で私にこう言った。



落ち着く場所は君のとなり

(世界なんて考えてた自分が)(馬鹿らしくなった)



*END*
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・・・あれ?
ほのぼのにしようと思ったのに、途中からシリアスになった・・・?

最初の方はまだふわふわ〜っとした雰囲気だったのに、蓋を開けたらシリアスという罠。

私は根っからのシリアス好きなのかもしれない。

因みにこのレッドさんはスペ設定です。
ゲーム設定のレッドさんも描きたい・・・。
そして口調が分からない。


リクエストありがとうございました!


title:虚言症



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