クラブTOSEI

□クラブTOSEIプロローグ
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場所はサイタマの某所。
ハシゴする酔っ払いに、座り込む学生。
少しくすんだネオンの光の下にそのクラブは存在する。

看板の名前は「クラブTOSEI」。


扉を開けると、ホストとしては珍しく、威勢よく「しゃぁす!」と挨拶が飛んでくる。
まず前に進み出たのは店長を任されている通称「和さん」だ。

人のよい笑顔でエスコートされて座席に座ると、新人で出世株の「迅」が火をこちらにくれる。

この店のNo.1は「慎吾」。少し顔にしまりがないけれど、首から肩にかけての精悍なライン、スーツから覗く鎖骨がしっとりと、こちらの触れたい衝動を呼び起こす。

何より巧みな話術、客への器用な気遣いが彼の人気を揺るがないものにしているのだろう。


彼と人気を二分するのが「準太」。少々ホストとして不器用だが、繊細な顔立ちはそれを補ってなお余りある。不器用なりに一本気な所も、客にうけているらしい。


そして最近急に売れ出したのが「利央」。クオーターだからか、透き通るような白い肌、宝石色の瞳。

準太とはまた、種類の違う逸材だ。まだ客の扱いに慣れておらず失敗もするが、それを楽しむ余裕のある客が増えている。技巧派の迅とはしのぎを削っているようだ。


他にも不思議な雰囲気をまとって会話をやりとりするのが上手い「ケイスケ」、無骨だが真摯な接客をし、黙って飲みたい客につきあってくれる「タケ」、すらりとした長身で客を引き付ける「ユージ」など、個性豊かな顔触れが揃っている。


しかし、舌の肥えた客はこの店で軽く楽しむと向かいで隠れ家のように経営をしているバー「美丞」へ動く。
ここはかつてTOSEIで働いていた二人のホストが共同で出資をし、自分達の理念で建てた店。きらびやかだけれどそれに少々目をくらませてしまった客が、大人のやり取りを楽しむのだ。
マスターは愛嬌あるけれど鋭い眼差しで客の心を読む巧者。
相棒は逞しい体と、陰りと、でもこっそりと繊細さを混じらせている。
彼の作る酒の肴は極上だ。


新宿には敵わないかもしれない。
けれどこの街にぽつりと、輝きを放つ場所がある。


それを求めてやまない人間は、決して絶えないのだ。


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