クラブTOSEI
□りおのりは理不尽のり・第一夜
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首を斜めに傾けて、そして頭をまさぐって鏡を見る。
「あー‥」
雨が降れば暴発し、そうでなくても毎日勝手。今日も重力に逆らって、毛先が上を向いている。
「なんでだよ‥」
ため息が出る。子供は親を選べない。
遺伝子も。
「また寝癖か」
ショベルカーのように頭をつかまれた。指の節がしっかりと当たる。
「慎吾さんっ」
子供みたいな扱い。赤くなって振り返ると、先輩はすこしゆるんだ目尻をくしゃっとし、大きめの鼻をこすった。
「だから、朝に風呂入れっつの」
「入ってるんです!で、ちゃんと乾かしてるんです!‥それでもハネるんですっ!」
反論した途端、ショベルカーはUFOキャッチャーのように何度もわしわしと頭を掻き回した。
「そりゃあ大層なクルクルパーマですこと」
「天然パーですからね」
衿の調子がうまくいかないらしく、あれこれいじっている同期が近づいて来た。
「うっせ、そのシャツお前には似合わねぇよ」
舌を出すと、あちらの口の端が釣り上がる。
「お前のクルクルパーマは脳みそから生えてるんだろ?」
「っざけんな、迅!」
飛び出そうとするオレを捕える一本の腕。
「営業中だっつの」
先輩はドアの向こうを顎で示した。
慎吾さんはオレよりはっきり言って背が低い。
でもそこから伸びる腕はいつもオレを確かな力で抱え、黙らせる。
「利央はその力を、迅はその口を仕事に使えっつーの」
くぐもった声、抑揚のない話し方。ホントは、この仕事に向いてない素質。
でも何か力が働いているのか、その声で客は引き寄せられる。
どんな子も、お姉さまも。
オレも、多分そう。何かと意見の食い違う迅も、そこは同じだと思う。
だから二人、声が揃う。
「‥うす」