クラブTOSEI

□りおのりは理不尽のり・第三夜・前編
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「これより裁判を始める」


暗闇の中で思わず身をかがめた。スポットライトがこちらを刺すように照らしたのだ。


オレは立たされていた。目の前には木の囲いがある。


「案件は被告人仲沢利央、この者がバカかどうかである」




‥‥。




はい?




もう一つ、ライトが点く。オレの向かい側、暗闇から生首がぬっと飛び出た。

思わず叫びそうになったが、裁判官は黒いマントを羽織っていただけだった。


しかし。


「それでは冒頭陳述をお願いします」

ものすごいタレ目。


あれはウエストコーストのホストだろ?


もう一つライトが点る。そこにはリクルートスーツを身につけた迅が書類を持って立っていた。

「今から述べる事に嘘偽りがないことを誓います。
‥被告人は‥」

それだけ言うと読んでいたはずの書類を投げ出した。

「‥まどろっこしい!被告人‥利央はものすごくバカです!バカ中のバカ、キング・オブ・バカです!」

周囲がどよめき、拍手が沸き上がる。オレは後ろを振り返ったが、あるのは闇だけだ。


「よろしい。では参考人」


迅の隣に兄ちゃんが進み出た。

「被告人は生まれた時からバカだった!」


だけど、なぜかノンタンのエプロンだ。

「人の言うこと鵜呑みにするわ、後先考えないで動くわ、肝心なところで鈍感だわ、兄として疲れる!」

「わかります!」

迅が兄ちゃんの手をとった。

「二人でヘルプに入っていると、いつもヒヤヒヤするんです。ドリンク作るの下手だし、空気読めないし!お客様が愚痴を始めたのにいきなり自分の愚痴を話し出したのにはホント参りました」

迅、半泣きだ。


兄ちゃんの隣から、また誰か出て来た。

「あいつ、アホでしょ。オレの女装気付いてねえし、接客も下手くそだ」

「オレらの作戦にただビビってただけだよね、イズミ」

「レンがウエストコーストのホストだってこと知らないで話してたらしいよね」

「ライバル店だったらメンツぐらい調べないとね?」


西のホストたちがぞろぞろ現れて世間話みたいに喋りまくる。
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