クラブTOSEI
□りおのりは理不尽のり・第四夜・2
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サイタマの西口はビルが立ち並び、半分高架になっていて一応都市の顔を見せてはいるが、ちょっと歩けばすぐ住宅街。そごうの横すら砂埃の立つ空き地だったりする。
狭い路地。
(あ、出て来た)
Tシャツにハーフパンツ。非常にユルい格好でサンダルをぺたぺたいわせている。
女の子がすれ違ってしばらくして振り向くけど、
うちのNo.2は休日に身だしなみを整えないで出掛ける人らしい。
慎吾さんは休日も余念がなくて、気がつけばケータイでお客さんに連絡してるんだけど、
あの人、今携帯持ってるのかなあ。それすら疑わしい。
たしかに準さんはお客を絶対持ち帰らない。
もちろん禁止事項だし、そういう行為で客を「もたせる」ホストは「裏ぞう」と呼ばれて馬鹿にされる。
だけどきまりはあってないようなもの。うちのホストも少しくらいテイクアウトしてるんだ、こっそり。だって男だし。
頑として色恋営業をしない準さんがNo.2でいるのは、もちろん飛び抜けて繊細な顔立ちもあるけど、
同じくらい繊細な生い立ちにあるんだよな。
準さん仕送りしてるっていうし、No.2なのに寮暮らしなのも生活費の節約なのかな。オフも遊ばないらしいからなあ。クルマもらってもすぐ売っちゃうし。
スーツもすごい着こなせてるけど、実はオレと同じブランドだった。
オレが即席で作ったキャラなんて準さんの前じゃ吹き飛んでしまう。
‥そんなすごい人を、
(オレはストーキングしてるんだよなあ‥)
道ゆく準さんを、電柱の影からじっとりながめている。
慎吾さんに言われたとおりオレは仕事中も見てたけど、お客さんを置き去りにはできないし、少し近づけばあっちは避けるし。
だから見るとこ変えようって‥こんなことしてるんだけど。
せめて女の子だったらなあ。泣ける。
準さんがいきなり方向転換してこちらにやってきた。慌てて電柱と一体になる。