クラブTOSEI
□りおのりは理不尽のり・第四夜・4
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まだ思い出し笑いを繰り返す準さんはソファに沈めて、今度はオレがジュースを注ぐ。
なんか‥よくわかんないけどオレ、恥ずかしいのか?
まあ、でも。
準さんが大量の食材を買うのも、サイズの違うシャツを買うのも、
「せっかく部屋が繋がってるなら一緒に暮らしたほうが楽しいですよねぇ。女の子もいることだし‥」
顔にオレンジの液体。
準さんが咳込んだ。
ああ‥オレのシャツ‥!
準さんが持って来てくれたTシャツに体を通す。肌触りからして高そうだ。
「それ、やるから」
「‥はあ」
ムカつくなあ。
しかし、準さんは居住まいを正す。
膝の上で手を組み、顎を乗せた。
「‥な、オマエオレの家族構成知ってる?」
なんでそんなこと聞くんだろう。
「えっと‥たしかお父さんを早くに亡くして、お母さんもあんまり働けない身体で、弟いるんだけどまだ小さいし、厄介な親戚もいて準さんは大学行けなくて、だからホストして学費を‥」
「オレの両親は近くで元気に暮らしてるよ。父さんはまだ現役だし、母さんは韓国入り浸り。オレも弟も大学だ。オレは今休学してるけど」
「へ‥??」
先輩は額を押さえてソファにもたれる。
「やっぱな。新人の半分くらいは信じてるかなと思ってたけど‥あのな、
そんなメロウな生い立ち、嘘に決まってんじゃん」
「え〜!」
準さんがTシャツを指す。
「それ6ケタ」
ううわ。またえらいもん貰っちゃったよ。
「ひっでぇ〜。オレお客さんに泣かれたことあるんスよ。準ちゃんは私が助けなきゃって」
「まあ、オレのこの外見ありきだな」
一瞬ホストの仕草になる。
でも、すぐに背を丸くした。
「―和さんに東口でスカウトされた」
大学三年、就職活動に先手を打とうとスーツを着て説明会へ向かう途中だったらしい。
「‥オレさ、あんま人とつきあうの上手くないわけ。だけど文系だからイヤでも営業だろ。まあ、一年我慢すりゃやれるようになるかなとは思ったんだけど、そしたら和さんが言うんだ」