よろず小説
□嵐
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―NHKの放送が終わった。
いつもなら耳をつく電子音と共にカラーバーに変わるが、今夜は違う。
三橋は、自室のベッドでタオルケットにくるまっていた。液晶テレビは静かな音楽を流し、日本列島が円に食われる姿を映している。
暴風が窓枠を激しくノックする。三橋はタオルにくるまったまま、膝を抱えた。
静寂を届けるテレビとは対照的に、家の外で風と雨がぶつかり合い、空気を破壊している。
広い部屋だ。
だから‥オレはこんな部屋、嫌だったんだ。
十人入ってもまだ余る空間。
今は一人しかいない。
自分がいないうちに、内装も変わっていた。壁紙が自分を拒絶しているような気さえする。
―いや、きっとオレは‥
オレを助けてくれるものはきっと、この部屋のどこにもない。
三橋は、震えた。
寒いのに、震えるのに汗が出る。首から伝い落ちてタオルにすいこまれていく。
何か大きな物が外で転がる音。何かにぶつかってシンバルみたいに弾ける。三橋はびくついたが、彼はもっと大きな恐怖に備えなければならなかった。タオルを握る。木綿はかたくかたく、縮んでいく。
怖い。
こんな思いは初めてだ。