よろず小説
□a-la-mode
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−どうして、こんな顛末になってしまったんだろう。
店のソファに体を預け腕を組む。
11月だというのに晴天で、気温も高い。店が気をきかせているのか、冷房が上から流れてくる。
だからオレの目の前にはコーヒーがあり、湯気があり、その先に大きなパフェ、そして目を輝かせて構えている後輩がいるのだ。
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利央は城のように飾られたその食い物を下から上から眺める。
「本当に食べていいんですか?いいんですね?」
「声」
周囲が利央に気付き出した。180以上あるデカブツ。クォーターだかなんだか、はしばみ色の瞳に金に近い巻き毛。
目立たないわけがない。
「うまそう、うまそう、うまそう!!」
パフェの前で叫んで、手で十字を切る。フォークでそろりと並べられた果物を持ち上げる。口に頬張る。
「んんん〜」
フォークをくわえたまま、ぎゅうと目を閉じ表情の全てがゆるんだ。
「おいし〜」
肘をついて見遣る。「ナニ、そのうまそうって」
「あ、西浦の四番。あいつに教わったんスけど、なんかメシ食う時にこう言うと野球が上手くなるんだそうですよ」
「へえ」
身体を崩す。たぶん根拠はあるんだろう。利央には正しく伝わってないだけで。
クリームを一口、大事そうに含んだ。
「慎吾さんは本当にコーヒーだけでいいんですか?ここのパフェ、おいしいのに‥」
ムリだっつの。
朝、模試の結果に頭を悩ませながら教室に入ると、和己が机の上に百円玉を並べていた。
「今日って誰か誕生日だったか」
和己は席から事もなげに返事をした。
「だって、利央だろ」