よろず小説

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野球部には「誕生日保険」というものがある。

ぶっちゃけ、野球部は勝ち数が恋愛偏差値。去年は甲子園に行けたから大フィーバーだったらしいけど(レギュラーのみ)、基本モテない。


まして、今年はな。


女子がくれるわけもなく、野郎がくれても味気ない。そして80人の大所帯。プレゼントを贈りあっていたら練習どこじゃない。


というわけで月に一度部員から百円ずつ集めてあてがうことにしているのだ。


「11月は三人しかいないから‥」

2500円も利央にいくらしい。オレはハンドタオルだったのに。

「何にするわけ」
和己は一枚メモを見せてくれた。律儀で角ばった文字。

『迅によれば、最近できたパーラーのパフェの事をしきりに話しているそうです』

ああ。新宿に本店があるアレか。

いや、でも。


「テイクアウトは無理だろう。ダメだダメ」

大体高校生にもなってパフェってなに。すると、

「あそこはテイクアウト窓口あるよ」

オレの右肩越しから山ちゃんがぬっと首を出した。


「誰かが買ってくればいいんだよ」

和己が頷いた。「じゃあ誰が持って帰るか決めよう」

ちょっと待て。「なんで引退したオレらが用意するんだ、だいたいタケは‥」

「じゃーんけーん」

山ちゃんが出し抜けに合図。

つられてパーを出した。









テイクアウト窓口前に女性がずらりと並んでいた。あと5分でシュークリームができるらしく、彼女達は異様なオーラを放っていた。


列に並ぶことも出来ず携帯を見るなどしてごまかしていたら、

「慎吾さんっ!」


でかいショルダーを揺らして背の高い後輩がやって来た。

「今日はありがとうございます!オレ一人で入れなくて」


しゃっす!ぺこりと頭を下げた先に、

山ちゃんが見えた。

手を振っている。デジカメつき。
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