秘密の部屋

□お兄ちゃんは心配性
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3Zかはわからないが、学パロ設定




「めかしこんでどこ行くの?」

玄関のドアを開けようとした時、後ろの方から声がした。
兄である神威の声だ。

この時間はいつもならまだ寝ているはずなのに。
ちっと心の中で舌打ちして後ろを振り返ると、寝癖頭の兄がこちらを睨むかのように見ていた。

「映画を見に行くアル。
今話題のやつネ。
じゃ、行ってきまーす。」

そう言って、その視線から逃げようとまたドアノブに手をかけた。

「ちょっと待ちなよ、神楽。」

肩を掴まれた、しかも強めに。
不機嫌な証拠だ。

「それにしてはめかし込みすぎじゃない?」

この兄は鋭い。
喧嘩で鍛えたのかはわからないが。

「誰が見てるかわからないアルからな、ただそれだけネ。」

強くそう言うが効果があるかどうか。

「違うでしょ。
あいつと会うんだろ。」

そう言う兄の目は、いつぞや見た喧嘩の時よりも険しかった。

だから、バレないように出かけようとしたのに。

「……そうヨ、悪いか!?」

「行くのやめなよ。」

そう言うと、今度は手を引っ張られた。


行かせないという意思表示だろう。

「なんでネ!?」

だからと言って譲れない。
せっかくのデートなのだから。

「嫌だから。」

そんな子供みたいな理由で返された。

「知るかっ!?
このシスコン!!」

足を蹴ろうとしたが、簡単にかわされた。

「あーもう、アイツ殺そうかな。」

そんな物騒な事を呟く神威に一瞬、恐怖を感じた。

中学の頃にパピーの片腕を折った時の事を思い出してしまったから。

「そんな事やったら、嫌いになるからな、バカ兄貴!」

「それはやだなぁ……。」

そうは言ったが、未だに手は掴まれたままだった。

「離してヨ!」

必死に降り解こうとするが、びくともしなかった。
はやく行かないと、アイツが待っているのに……。

「アイツのとこに行くんだろうからイヤ。」

「だから、シスコンかよっ。」

「そうだよ。」

認めやがった……こいつ。

反論しようと口を開こうとしたら、聞き慣れたチャイム音がした。

ピンポーン♪

「ごめんくだせぇ。」

最悪だ。
今、兄が一番見たくないヤツが来てしまった。

「帰れ。」

大きな声で言うと、さっき出るために私が外して置いた鍵を神威は閉めた。


「って何してるアルか!」

「害虫を入れないようにだけだけど?」

にっこりと神威は笑いながら言う。
仮にも妹の彼氏を害虫呼ばわりかと思う。

「害虫はねーでしょ。
おい、チャイナ、はやくしねーと映画始まっちまうぜぇ。」


ドアの向こうから声がする。
その声の方へ行きたいが、腕を掴まれたこの状態じゃできない。

「バカ兄貴に捕まってるアル!」

「帰りなよ、後で神楽にはその映画、俺と見に行かせるからさ。」

そう言う神威の一瞬の隙を見て鍵をあけた。

「お義兄さん、そろそろ妹離れしたらどうですかぃ?」

そう言いながら沖田が入ってくる。
これではやく映画を見に行ければいいのだが。

「うるさいよ、第一誰がお義兄さんだよ。」

「いやァ…俺もあんたみたいなのをお義兄さんって呼ぶの嫌なんですけどねぇい?
そうなるかもしれねーから仕方ないだろ。」

そう言い、沖田は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

「寝言は死んでからいいなよ。」

それにすぐさま兄が返す。
そして沖田が更に返す。
その繰り返しだった。

ある程度してくるといい加減腹立ってくる。
もう今から行っても映画ギリギリじゃないかと。


「いい加減にしろ、お前らァァァア!!!」

二人の頭を思いっきり殴った。




そんないつもの日常。





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