小説
□俺と奴と一匹と
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用意していたバスタオルを一枚差し出し、革張りの白いソファーの下に座るよう促(うなが)す。そして俺は脚の間にアスランを挟むようにしてソファーに腰を下ろした
「準備が良いな」
「当然だ。貴様とは違う」
わしゃわしゃと濡れた藍色の髪を拭いてやる。アスランは猫をバスタオルでぐるぐる巻きにするように拭いているようだ。しかしあんなに大人しい猫も珍しい。この家に来てから一つも鳴き声は聞いてない。そんな俺の心を読んだかのようにアスランが小さく笑った
「こいつ、お湯掛けても大人しかったんだ。凄いだろ?」
俺に見せるように猫を抱えた
「ふん…ほら、さっさと服着ろ。風邪引くぞ」
アスランの肩にバスタオルを掛けて、俺はキッチンに戻る。しまった…牛乳温めてなかった。でも元々少ない量だから直ぐに温まり、それを再び皿へと注ぐと指先で熱さを確認する
「…よし」
「なぁ」
アスランが肩にまだバスタオルを掛けたままの姿で俺の横に近寄ってきた。猫はいつの間にか俺がさっきまで座っていたソファーの上で体を一心に舐めている
「俺のコーヒーは?」
藍色の前髪からぽたり、と滴が落ちる
「…野良猫より質(たち)が悪いな」
バスタオルの両端を掴み、引き寄せる。少し驚いたような奴の間抜けな表情に口角を上げた