小説
□俺と奴と一匹と
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近付いてきた顔に躊躇(ためら)わず唇を寄せる。ふんわりと石鹸の匂いがした
「!?」
が、アスランがビクンと身体を震わせ俺から離れる。奴の足元にはあの猫が此方を見上げてきて一声
「なーぅ」
その猫の姿にアスランが、くすっ…と吹き出した
「すまない…腹減ってたんだな」
牛乳の入った皿をアスランが持ち、猫に近付ける。一層鳴き声が大きくなるが、何故か素直にあげようとしない
「おい!勿体ぶらずにさっさとやれよ!」
「だって必死な姿可愛いじゃないか」
くすくす笑いながら、そっと皿を置くと猫は飛び付くように牛乳を舐めだした
「それはそうと…いい加減貴様は服を着てこい!そんな格好でふらつくな!襲うぞ!!」
「んー…」
名残惜しそうに猫の側から離れたアスランは自室に向かった。それを見届けた俺は、多少の残念さを覚えながらコーヒーと紅茶を淹れ始めた
ようやく服を着て来たアスランにコーヒーの入ったマグカップを差し出す。「ありがとう」と呟き、奴はその場で一口啜った
「熱ッ!!」
「馬鹿か貴様はッ!舌見せろ」
唸るアスランは、べ…と舌を出す。見てみると微かに舌先が赤い気がする
「ほんと…世話が焼けるな」
水を用意し、差し出すとアスランは喉を鳴らして飲み干した。でもまだ痛むのか眉間に皺寄せて難しい顔になる
「とりあえず、座れ」