小説

□俺と奴と一匹と
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アスランが猫を拾ってきた。汚らしい黒猫は奴の腕の中で俺をじっと見つめてきた。その瞳はアスランと同じ翡翠

「可哀想だから…」

へにゃ、とアスランは笑ってバスルームへ消えていった。暫くしてシャワーの音が聞こえてくる。俺は仕方無くバスタオルを二枚用意し、上がってくるのを待った


「まだ飼っていいとは言ってないんだが…」

窓の外には重そうな雲が空にどっしり構えている。もう少ししたら雨が降る時間だ。俺は奴が帰ってくる前に淹れていた紅茶を一口啜る

「……ぬる」

作り直そうとキッチンに立ち、ついでに…と奴の分の赤いマグカップも準備する。彼奴はコーヒーだ
そこで俺は思い出す。もう一人…いや、もう一匹の存在があった。冷蔵庫から牛乳パックを取り出して、平たいお皿に注いでやる。コーヒーを作るより簡単だ、と思ったが間違えた。人肌ぐらいの温かさが良いという情報を思い出し、皿に入れた牛乳を鍋に移して温めようとした

「イザークー?」

ちょうどアスランが上がってきたらしく後ろを振り返ると腰にタオルを巻き付け、問題の猫は貧相な姿でアスランに抱かれていた

「こら、滴…落ちてる」

「拭いてあげたんだけどな…」
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