小説

□感謝を込めて
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発砲音と共に女性特有の甲高い声がブリッジに響く

「マリュー・ラミアス…今度動いたら外しませんよ」

撃たれた反動で身体が宙に浮いたマリューは肩の傷に呻く。慌ててムウが寄り添った

「皆さんにも言える事です。変に動いたりしたら撃ちますよ俺は」

「どうして…そんな事…」

キラが信じられないと顔を歪める。ラクスも眉を寄せて俺を睨む

「どうして?その理由は簡単だよ」

ぐるり、と目だけを周囲に動かして呟く

「だって狡いじゃないか」

大事な人達が生きている
誰も失っていない

今回の戦争でハイネ、ミーア、レイと議長、タリア艦長が死んだ。なのにキラ達は今回の戦争で何も失っていない

「あなた達は何も失っていない。俺の周りには失っていった人達がいるのに…だから今、俺の目の前で平然と笑っていられる。俺がどんな気持ちでいるのか知らずに」

到底笑っていられる状態ではない。最後の最後で3人の人を失った。しかも手を伸ばせば救えた命。なのにキラは「もう行こう」と、躊躇った俺の手を引いた。「でもまだ…」と渋る言葉をキラは聞いてくれず、あまつさえ「ラクス達が待っている」と言った
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