小説
□かけがえのない時間
1ページ/4ページ
ティーカップの縁に付いたルージュを白く綺麗な指先で拭う。その一連の動作にドキドキしながら女性を見ているとスカイブルーの瞳と視線がかち合った。にこり、とその瞳が細められる
「アスラン君、本当に綺麗になったわねぇ」
エザリア様は嬉しそうに微笑んでクッキーを摘むと優雅に口に含む
「うん、美味しい。私もまだまだ腕は落ちてないわね。さぁ食べて食べて」
「あ、はい…いただきます」
勧められたそのクッキーはエザリア様のお手製で、よくイザークが小さい時に作ってあげたそうだ。シンプルなチョコチップ入りのクッキー。彼がこれを食べて育ったのだと思うと、なんだかとても可愛く感じた
欠片を落とさないように、ぱくりと一口かじる
「ん!美味しいです!」
クッキーはサクサクと音を立てて舌の上で溶けていく。そしてカカオの良い香りが口いっぱいに広がる。エザリア様の前なのに思わず、へらり、とだらしなく笑ってしまった
「そう!その笑顔!!あの時のイザークにそっくりだわ!」
そう指摘され、自分の失態に赤面するもエザリア様は「本当に可愛いわね〜イザークが執着する訳だわ」と笑顔を浮かべている