小説

□かけがえのない時間
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ティーカップの縁に付いたルージュを白く綺麗な指先で拭う。その一連の動作にドキドキしながら女性を見ているとスカイブルーの瞳と視線がかち合った。にこり、とその瞳が細められる

「アスラン君、本当に綺麗になったわねぇ」

エザリア様は嬉しそうに微笑んでクッキーを摘むと優雅に口に含む

「うん、美味しい。私もまだまだ腕は落ちてないわね。さぁ食べて食べて」

「あ、はい…いただきます」

勧められたそのクッキーはエザリア様のお手製で、よくイザークが小さい時に作ってあげたそうだ。シンプルなチョコチップ入りのクッキー。彼がこれを食べて育ったのだと思うと、なんだかとても可愛く感じた
欠片を落とさないように、ぱくりと一口かじる

「ん!美味しいです!」

クッキーはサクサクと音を立てて舌の上で溶けていく。そしてカカオの良い香りが口いっぱいに広がる。エザリア様の前なのに思わず、へらり、とだらしなく笑ってしまった

「そう!その笑顔!!あの時のイザークにそっくりだわ!」

そう指摘され、自分の失態に赤面するもエザリア様は「本当に可愛いわね〜イザークが執着する訳だわ」と笑顔を浮かべている
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