love

□穏やかな日に
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 今のアスランがあるのはイザークのおかげなのだと、改めて思う。
 アスランはそっと目を開けて、イザークの膝から彼を仰ぎ見る。
 そんなアスランに気付いたイザークは、読んでいた本を閉じて膝枕をしている恋人に微笑む。
「なんだ? どうかしたのか?」
 問いかけながら、アスランのやわらかで少しクセのある髪を撫でる。
 そんな他愛のないしぐさが優しくてくすぐったくて。
 アスランは、幸せだと思う。
「アスラン?」
「なんでもない。……幸せだと思ってさ」
 そう言ってふわりとアスランが笑うと、イザークも微笑み返してくれる。
 そんな穏やかな幸せの中、髪を撫でてくれるイザークの手が気持ち良くて、アスランはつい、うとうとしてしまったようだった。 ふと気が付けば、窓の外は暗くなっていた。
「……イザーク?」
「ああ、アスラン。起きたか?」
 何もなかったかのようにイザークが応えるから、アスランは申し訳なくなりながら起き上がる。
「すまない……。俺……」
「構わないさ。今日は特別な日だからな」
「え?」
 イザークの言葉の意味が分からなくて。イザークが視線でテーブルを示すと、既に夕食のためのセッティングが出来ていて、見ていたかのようなタイミングで料理が運ばれてくる。
 イザークにエスコートされて席につけば、メニューはアスランの好きなロールキャベツに、アスランが一番気に入っているパンと、デザートには桃のタルト。
 このメニューは、ここ数年、恒例となっているアスランの誕生日のメニューだということに気付いて、アスランはイザークを見上げる。
「もしかして……、俺、今日……誕生日?」
 そのアスランの反応に、イザークはくすくすと笑う。
「やっぱり今年も忘れていたのか。……アスラン、誕生日おめでとう」
 頭を優しく撫でながら。生まれてきてくれてありがとう、と。イザークが小さく言う。
「今年は他に何も用意できていなくてな……。すまない」
 少し困ったように、申し訳なさそうにイザークが言うのへ、アスランは勢いよく頭を振った。
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