小説

□与えてくれたモノ
2ページ/3ページ

カラカラと氷を回す音と店内を流れる音楽が二人を包み込む










「やっぱり俺は何もいらない」

イザークが言うよりも先に強く彼を見据える






「もう幸せだから」





あの大戦から両親や友をなくし、再び戦渦が世界を揺るがした
そこでも大事なモノが消えていって、いつしか俺の内部の何かが失われていった

けれどその失っていったものをくれたのは君だった








――だから









「欲しいものはないんだ」












何度目かなるため息が聞こえる





「全く、可愛い事言ってくれる」



ふと頬に彼の掌が触れると同時に唇にコーヒーの味がし、優しく触れるそれにうっとりと俺は酔いしれた












「イザーク、ここ店内だぞ」


「……」




気がつけば周りにいる客は俺達を好奇心の視線を向けていた





「さっさとこんな店出るぞ!!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ