小説
□愛を叫べ
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「アスラァ〜ン!!」
後方から呼ぶ声
誰だ、と振り向くまでもなく彼であるのは分かる
だから振り向かない
スタスタと何事も無かったかのように進むアスランをまた呼ぶ
今度は“勝負だ”と付け加えて
「いーやーだー」
そのまま進みながら気のない返事を返せば、ぐいっと肩が後ろに引き寄せられる
真横には軽く息を切らしたイザーク
鼻の頭には汗の玉が浮かんでて
「走ってきたのか?」
ちょいちょい、と指先で汗を拭ってやるとイザークは鋭い目をさらに吊り上げた
「呼んでも貴様が止まらなかっただろうがっ!!」
「そうだっけ?」
「あぁ」
まぁ確かに呼びかけを無視してたしなぁ…と目を泳がせる
イザークは溜め息をつき、アスランの肩に自分の顎を乗せた
「勝負しろ」
「んー…」
この状態で進む訳にもいかず、今度はアスランが溜め息をつく
「勝負にこだわり過ぎだと思うが?」
「そうしないと生真面目な貴様は俺に構ってくれないだろう?」
その言葉は若干皮肉っぽく聞こえる
アスランは首に回されたイザークの腕にささやかな抵抗として爪を立てる
しかし長袖であるレッドの上着に遮られ痛みは無いに等しいみたいだ