小説
□鏡越しの恋
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一枚のポストカードを手に店の前に立ち止まる
ジーンズにパーカー、という色気一つも無い格好のアスランはカードを目の高さに持ち上げた
翡翠の瞳は綺麗な手書きの文字列を何度も追う
(これは行かないと相手に悪いよな…ってか何俺期待してんだろ…第一ただの客だし、)
少し手汗でふやけたカードを一度大事に鞄にしまった
扉を開ければシャンプーの良い香りがフンワリとアスランに降りかかる
「いらっしゃいませ」
カウンターに居る女性スタッフがにこやかに挨拶した
「今日は何にしましょうか?」
自分とは違って煌びやかなその女性スタッフにどことなく引け目に感じてオドオドしてしまう
「えっと、カット、を…」
「はい、カットですね。ご指名は?」
「…イザークさんで」
ドキドキしながら鞄からあのカードを出し、スタッフに見せた
「トリートメントサービスですね、あ…」
ニコニコ笑うスタッフはアスランを見つめた。いや、アスランの後ろを見ていた
その事に首を傾げたアスランの後ろから囁くような声が響く
「来てくれたんですね」
「!?」
あの綺麗な横顔があまりにも近くにあり、アスランは思わず身を避けた