小説
□ハピネス
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――朝、自然と眠気が覚めてイザークはゆっくりと上半身を起こす
少し冷える部屋の中、朝日がカーテンの隙間から淡く指していて
今日は奴の誕生日だ、と認識した途端にスッキリと頭の中も覚めた
午前中に予約していたケーキを取りに行かなければ…
隣に寝ているアスランを起こさないように、と慎重にベッドから出る…のだが
「は?」
隣で寝ていたであろう人物は居なかった
変わりにほんのりと部屋に微かに漂う良い香り…これは……
バタバタと部屋を出て一直線に向かうはキッチン
扉を力任せに開ける
壁にドアノブがのめり込むような鈍い音がしたがこの際気にしない
「貴ッ様あぁ〜」
大抵名前で相手を呼ぶのだが、状況が状況なのでやはりこの際気にしない
「あ、イザークおはよう」
のほほんと振り返って笑顔を浮かべるアスランの手には菜箸と、オタマ
そしてエプロン姿という、理想の朝の風景がそこにあった
少しだけ、ほんの少しだけニヤー…とだらしなくなった口元をイザークは慌てて引き締める
「何してるんだッ!」
「何って…ロールキャベツを作っているんだが…?」
それが何か?と首を傾げる彼に声を荒げた
「それは俺がする事だああぁ!!」
ジュール邸のある高級住宅街にはその日、ニワトリの鳴き声よりも彼のデカい声で住宅街に朝を知らせた