小説

□天国に行けなくなったら
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何を思ったのか、急にアスランが「地球に降りたい」と言い出した
半ば強制的に俺を引き連れて地球へ降り、フランスとやらに来た

季節は冬
周りを歩く人々はコートやマフラー、帽子等で防寒対策している
そんな光景を見たのはもう数時間前



アスランが無言で向かった先の建物では人が少なく、俺達が入ったことで、その人々は皆部屋を出ていってしまった
アスランを見ると「もう夜だから人は少ないよ」と小さく笑った


ひんやりとした澄み切った空気が辺りを漂う
吐き出す息は白く淡く消えて
隣にいるアスランはただただ、翡翠の瞳をステンドグラスに向けていた

誰も居ない空間
外部からの透過光で見るこのステンドグラスは非常に美しく写る
アスランの鼻先は赤く、この部屋の中が寒いことを知らせていた

そっと肩を寄せ、体温を分け与える

それでも尚、光輝くステンドグラスを視線から外さなかった

俺達コーディネーターは神など信じない
星のご加護があるから

信じていない神の宿るこの部屋――教会に、アスランは魅了されていた
それが何故か悔しくて

顔を自分の方に向かせて無理矢理に唇を重ねた

「―…ちょ、」

「…神など」

――信じてないだろう?
寒さなのか、それとも照れてなのか、アスランの耳が赤い
そっと囁き、同意を求める
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