scritto内、「HAVE A NICE DAY」より一部。
2201、今は昔1001じゃぱん選出後設定です。
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「もっと笑えや」
くすくすと続けて笑ったその顔がぼんやりとぼやけていたから、夢じゃないかしらと思う。
「鳥谷はもっと笑ろたほうがええよ」
くぐもった声。青春の名残を残した少し腫れぼったい頬と細い顎の内からでてくるそれはいつも不器用に震えていて、それが尚更愛しくさせる。
にも関わらず、その言葉の数々はいつも的確でいて、芯の強いものだ。平気で人の心を動かして、入ってくる。だから皆が、彼を好きなのだ。
「野球、好きやろう。お前。」
いや、誌面やテレビで残す言葉だけではない。マウンドの上の強さがあるからこそ、皆彼が好きなのだろう。
確かな力。
「やったらもうちょっと、笑てみ」
そしたらもうちょっとファン増えるで、なんて適当な言葉をその人は続けてまた笑った。
伸ばされた手が自分の背中に届けられる。悪戯に背中をはい回る指が、ああ夢じゃあないんだ、と自分を現実に引き戻す。
「球児さん、くすぐったい」
その指もその言葉もくすぐったいものだった。
自分のキャラがそうゆう風に出来ていないことは、自分が一番知っている。
(続)
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