小説
□非常識なオトコ Q完結
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オレは苛立っていた。
本当に。
「なんでって……」
やりたくもない残業を強いられているからだ!
「なんでオレばっかり……」
ぶつぶつ愚痴るのを、誰が止められようか?
フロアには誰もいない。聞いてくれる人も賛同してくれる人もいない。
完全独り言だけど、かまうもんか。
小林ジロー25才
しがないフツーのサラリーマン。
そもそも、こんな仕事は入社3年目の人間がやる仕事じゃなかった。
取引先へ出す書類の作成………なら話はわかる。
それなりに頑張ってきたし、これぐらいのものならやりあげる自信がある。
それなのに、こんなしょうもない仕事を押し付けらるるなんて!
ネクタイを少しゆるめてため息をつく。
「新卒でもできるやんか……。」
だいぶ前に、にこやかに憎たらしい笑顔で帰って行った課長を思い出す。
季節は秋口。
何をするにも過ごしやすい今日この頃。
……終業時間間近の5時半くらいに。
悪魔はオレのデスクにやってきた。
「あ、小林君暇やんな?これ、悪いけど月曜日にはあちらさんへ出さなあかんやつやからちょっとやっといてー。」
「オレがですか?!」
今日は金曜日。明日は土曜日だし休みだし。ということで、周りは早く仕事を終えたくて、早く飲みに行きたくて、早く彼氏彼女と会いたくて、………といった感じで精力的に仕事をこなしていた。
オレもその中の一人、だったけど……
実際には飲みに行くお誘いも予定もなく。
彼女もおらず……。
淋しい気持ちを隠しながら、周りに合わせて忙しく業務をこなし、ぶらぶらして帰ろう……、と考えていた矢先だった。