時流の狭間
□序章
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――時々、思っていたの。私は普通でいられればそれで良かったのにって。
小さな幸せと、小さな不幸と。それらが繰り返される毎日。そんな普通だったらって。
特別な幸せなんて要らなかった。ただ、変わらないものだけが欲しかったの。
…まあでも、それは昔の話。彼に会う前の、本当に昔のこと。今は絶対思わないよ。
何故か、って?それは、私がもう、特別な幸せを手に入れちゃったから。
現金だよね。わかってる。でも、一度掴んだら手放せなくなっちゃったの。
――この幸せをくれた、彼の手を。
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