HPオリジナル小説

□欠乏症
1ページ/1ページ

『おう、来たか。ま、そこに座っとけ』

彼の示す場所は、彼と向かい合う机の前だった。



学校帰りにいきなり着信を知らせたケータイ。

『非常事態だ。今すぐ来てくれ』

彼の言葉を疑うことなく、そのままの足で夜行の館へと向かった。

いきなりの来客の自分を、出迎えた翡葉は判っていたかのように彼の部屋へと通した。



そして、扉を開けた自分を出迎えた彼の言葉は、先ほどのものだった。



「で、何が非常事態なんだよ。何か有ったのか?」

烏森関連での非常事態なら、放っておくわけにはいかない。

『あぁ、非常事態だ。
良守欠乏症だ』



「…はぁ?」



『最近仕事で半年以上会ってなかったからな。
久々にお前に会いたくて溜まらなくなった』


「…だからって、いちいち呼び出したのか?」

『あぁ、そうだが』



何が悪い。とでも言いたげに真剣に返す彼に、呆れるしかない。



『だから…良いだろ?久々なんだし』



顎を掴まれ上向かせ、唇を塞がれる。




(彼に会いたかったのは、自分だけじゃなかったんだ。)







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ