HPオリジナル小説
□欠乏症
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『おう、来たか。ま、そこに座っとけ』
彼の示す場所は、彼と向かい合う机の前だった。
学校帰りにいきなり着信を知らせたケータイ。
『非常事態だ。今すぐ来てくれ』
彼の言葉を疑うことなく、そのままの足で夜行の館へと向かった。
いきなりの来客の自分を、出迎えた翡葉は判っていたかのように彼の部屋へと通した。
そして、扉を開けた自分を出迎えた彼の言葉は、先ほどのものだった。
「で、何が非常事態なんだよ。何か有ったのか?」
烏森関連での非常事態なら、放っておくわけにはいかない。
『あぁ、非常事態だ。
良守欠乏症だ』
「…はぁ?」
『最近仕事で半年以上会ってなかったからな。
久々にお前に会いたくて溜まらなくなった』
「…だからって、いちいち呼び出したのか?」
『あぁ、そうだが』
何が悪い。とでも言いたげに真剣に返す彼に、呆れるしかない。
『だから…良いだろ?久々なんだし』
顎を掴まれ上向かせ、唇を塞がれる。
(彼に会いたかったのは、自分だけじゃなかったんだ。)
終