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□fallin' DOWN↓
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『ちゃんと来てよ……』


─ダメよ、行けないもの。その日は私の人生で1番大切なものがあるの!

『せっかく俺が日本に4日間もいるんだよ?!今までちゃんと全部会いに来てくれたのに冷たくない?!浮気してるの?』

─ちょッ!………黙って聞いてればなんなの?!信じられない!!疑うなんて最低!!








最低……最低………最低………



頭んなかがその言葉だけをリフレインする。
そのときはもう、耳に遠く聞こえるのは姫が通話を切った音だけだった。





『俺が何をしたって言うんだよ』



突然叩き落とされたような痛みからじわじわと広がるのは、苛立ち
姫に対して初めて抱く怒りの感情だ。













───────────





─ヒョクチェ?!今日もかっこよかったよ!ソロのイ・ヒョクチェコールも昨日より大きかったんじゃない?!じゃあ私、急いで帰るから!ヒョクチェも明後日は気をつけて北京行ってね!




昨日も、
そのまた一昨日も、
彼女は俺の贈った席でライブを楽しんでくれた。

俺の仕事はなかなか韓国を出ることが出来ないものばかりがメインで、日本にはほとんど来られない。
それを承知で俺との愛を、メールや国際電話で我慢してくれた姫に俺は相当感謝していた。

なかなか会えないからってこともあり、今回のSuper Show3が日本で開催するのが決まったときの俺のテンションの上がりようは半端じゃなかったんだけど、せっかくだから姫のために素敵な俺のステージも見せようと、お気に入りのダンス曲に振り付けをしてそれはもう練習した。



どれだけ頑張ったかは姫なら見たら分かってくれると思った。

ライブのあと楽屋に来て、まっすぐ俺の胸に飛び込んでくると思っていた。



でも、
昨日も、
そのまた一昨日も、
姫は待てども待てども俺のとこに来なくて。

人込みに飲まれて楽屋口まで辿り着かないんじゃないかと心配になって携帯を見れば……【留守電1件】

しかもそれを聞けば、すでに姫は帰り道だと言うじゃないか。

約半年前の8月に、姫が何とか貯めたバイト代で俺のソウルでのSuper Show3初演を見に来た以来…姫とはちゃんと顔を合わせられてない。



─それなのに、明日は来ないなんてさ……













『『ひどいよ……、』』





ヒョクチェは何も分かってない!
人の気も知らないで。



会いたいのは私も同じだし、会ってしまってそれこそ…ヒョクチェに触れてしまったら私…帰りたくなくなってしまう。

《今すぐに韓国でもどこでも連れ去って!》

とか言って、いざってときに度胸のないヒョクチェを心の底から困らせる言葉を言ってしまいそうになると思う。



…でも私にも夢があって。

その夢のステップアップのために1年を費やしてきた。
今さらここで無駄には出来ない。

明日はその試験の日。
奇しくもSuperShow3の最終日。




















───────────







喧嘩別れみたいになるのはイヤだったから、何度も電話をしようと思った。

勇気を出してかけてみるけど、何度かけても数回のコールの後に続くのは留守番電話への案内音声。



─本気で浮気してるの?



本当に姫のことをそんなふうに疑ったことはない。
姫はいつだって何でも正直に俺に話をしてくれてた。

けれど、疑いたくない気持ちと繋がらない電話が相乗効果で俺を揺さぶりにかかる。







『ライブ前に何てしかめっ面してんですか。』



不意打ちでキュヒョンに軽くケツキックされて俺は前にズベッと倒れた。

…すでに涙目の俺。

キュヒョンのほうを見上げれば、そんな泣きながら睨まないでくださいよ…と、両手をあげて降参するふり。
起こせよ〜…と言えば、ヒト1人でこんなダメ人間になれるの逆に尊敬しますよ…と手を差し伸べてくれた。





『姫が電話に出てくれないし、昨日までライブに来ても俺に会いに来ないし…口喧嘩になっちゃって。』

『ふぅん………』

『浮気してんだろ!とか酷いこと言ったなぁって思って電話してるのに………姫は出てくれる気がもうないみたいだし。』





言っていて自分が嫌になる。
俺、調子に乗りすぎだ。

俺ホント…何様?って感じ。










『姫ね…今、試験を受けに行ってるんですよ。だからヒョンの電話に出れるはずありません。』



キュヒョンはポンポンと肩をたたいて宥めるように笑ってくれた。

それは慰めるため?
それともホントに姫は……?

俺は無言でキュヒョンを見つめ、その真意がどっちなのかと迷う。





『あ、やだな。嘘じゃないです、ちゃんと姫に聞いたんだから。』

『なんでお前が?』

『ヒョンとケンカしたあとの面倒を誰が見てると思ってるんですか?』



日本に来てまで迷惑かけるのやめてくださいよね、とキュヒョンはソファーにごろりと横になった。



『あ、そうだ……試験が終わった姫のこと、ヒョンが迎えに行ってくださいね?』



俺に迎えの車をよこして、とか言うんですけど…面倒なので。と、あくび半分でキュヒョンは目を閉じた。



『い、いつ行けばいいんだよ?』

『えー?ライブ終わってからすぐ。池袋………?だったかな、なんとか大学。』

『えー……アバウトすぎ。』


























───────────






これが終われば姫に会いに行ける!と思うと、3日目なのに疲れなど吹っ飛ばすほどの力が漲った。

ライブの始まりからずっと青い光が舞うとともに、止むことのない歓声が俺たちを上へ上へと押し上げてくれる。

昨日までは姫もこの中に…………と、思うと少し寂しくなるけれど、俺の最高のソロステージをここにいない彼女まで届くように全力を出そうと決めた。
彼女だって今、自分の夢のために必死で戦っているんだ。






衣装に着替えてポップアップに乗る。

スタンバイ出来たと同時にせり上がり、歓声の中に俺の名前を見つける。



─姫、俺……夢中だな。











ビートを聞いて自然に動く身体。

俺は昔からダンスに夢中だ。





キャーッ!と爆発的に響く俺の好きな青。

俺はこの海に夢中だ。







初めて見せることが出来る俺だけのステージ。

俺は、俺をこんな気持ちにさせてくれた姫に夢中だ。


















──────あ、






歌いだし間際に、
ペンの間をぬって席についた女の子がピョンピョン飛び跳ねた。



髪はボサボサで、

暗くても分かるほどに頬は真っ赤

まるで授業参観にかけつけた母親のように俺に向かって手を振る。



〈し・け・ん!お・わ・り!〉

口パクで必死な顔で俺にそれを伝えるために姫は急いできたのかもしれない。

慣れない化粧もボロボロで、髪もボサボサなのに直さずに来て、今こうして俺とただ一人、まっすぐ目線を合わせている。

ヒョクチェ〜!ヒョクチェ〜!!とライトを振り回して、上着を脱ぐのも忘れてキャーキャー騒ぐ姫に顔がついつい綻んだ。











─俺……、姫に夢中すぎるね。






こんな暗がりの中、一面同じ青に染まる中でも、俺には君が見えるんだと気付く。

ねぇ、君の一挙手一投足すら見逃さない俺を褒めてくれる?



─俺は姫に、











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End...
20110304
 

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