はくしゅろぐ

□どっち?
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「モンブランとショートケーキ、どっちがいいですか?」

「んー、モンブラン」

「コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」

「コーヒーかな?」

「何か映画でも見ます?アクション系とロマンス系、どっちがいいですか?」

「んー」

「あ、雑誌でも読みます?歌劇とグラフ、どっちがいいですか?」

「って、テル」

「はい?」

「いいから、こっちおいでよ」

「……はい」

「うん、そうそう。別になにもしてくれなくてもいいよ」

「でも」

「でも?」

「じゃあ……かっこいいわたしと、かわいいわたし、どっちがいいですか?」




ソファーの隣に座ったわたしの腰に、
チカさんが両手を回して抱き寄せた時にそう聞くと、
さすがにチカさんも気付いて、
ちょっと笑ってから、

「どうしたの?さっきからどっち?、どっち?、って」


だってせっかく久しぶりに会ったんだもの。
チカさんのいいようにしたいんだもの。

そう言うとチカさんはふわりと柔らかく笑って

「お気持ちは嬉しいけれどね。テルがいればそれでいいよ」

なんて言われて。私は頬を赤らめた。
別にそう言われたことにじゃなくて。
そう言ってもらえるとわかっていてそう言わせた自分の傲慢さにじゃなくて。

どっちどっちと聞いたのは、もっともっと好きになってほしいから。
もっとほしいだなんて。
そんな自分の強欲さを恥じて顔を赤らめた。



もっともっと好きになってほしいから、チカさんのいいようにしたいの。
もっともっと好きになってほしいから、チカさんの好きにしてほしいの。

肌に感じるぬくもりに十分すぎるほど想われているとわかるのに。
もっともっと、好きになってほしい。

いつだってわたしのほうが少し、いやだいぶ、あなたを好きでいるような気がしているから。

ねえ。
同じだけ好きになってなんて言わないから。
だから少しでも多く、好きになって。

もっと、もっと。

くるりと身体をねじってチカさんの首筋に顔をうずめる。
赤くなった顔を隠すように。

チカさんはわかったように、わかっていないように、小さく笑うと、
そのままわたしの重みを受け止めてソファーに沈んだ。

「ねぇ」

「なに?」

見上げるチカさんにわたしは聞いた。

「先にシャワーと後にシャワー、どっちがいい?」

もっと、もっと。

「ほらまたどっち?だ」

「どっち?」

「どっちもイヤ」

「え?」

「……一緒におフロ、入りたいな」


ああ、かなわない。

これじゃあもっと、わたしの方が、好きになってしまう。


だから、もっと好きになった分、もっと好きになってほしい。
これはきっと、強欲じゃなくてただの愛。













【END】
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